歯石の話 〜隠れ歯石を知っていますか?〜
今日は、皆さんも一度は聞いたことがあるであろう歯石のお話です。
以前よりも、定期的に歯石取りを含むメインテナンスで歯科医院を受診される方が増えていますが(それでも欧米に比べたらまだまだ少ないですが)、実は歯石ってなんだかよくわからないという方、いらっしゃるのではないでしょうか?
歯磨きが不十分だと歯垢(プラークやバイオフィルムとも言われます)という細菌の塊が歯に付着します。さらに、この歯垢(プラーク、バイフィルム)が長期間、歯に付着していると唾液中のカルシウムなどの無機質と結合し、石のように硬くなってきます。これが歯石です。
そしてこの歯石、実は2種類あるのです。
一つは、白色から黄色の歯石(歯肉縁上歯石)。もう一つは黒い歯石(歯肉縁下歯石)です。
歯肉縁上歯石はその名の通り、歯肉より上の歯の表面についている歯石で、割と柔らかく簡単に取れます。磨き残した歯垢(プラーク、バイオフィルム)と唾液中のカルシウムなどの無機成分が結合し作られます。唾液がその形成に大きく関与することから、歯肉縁上歯石の付きやすい場所として、下の前歯の裏側、上の奥歯の外(頬)側(両方とも唾液線という唾液が出る場所の近く)が挙げられます。ご自身の下の前歯の裏側を鏡で見てください。白色から黄色っぽい、歯磨きで取れない硬いものが歯の表面についていたらそれが歯肉縁上歯石です。皆様が、歯科医院で定期的にとっている歯石は主にこの歯石のことです。
そして、あまり馴染みがないかもしれませんが、歯周病治療を行う上で非常に重要な歯石が、黒い歯石(歯肉縁下歯石)です。黒い歯石(歯肉縁下歯石)は歯の根の表面についており、歯周ポケットの奥深くに隠れているため直接見ることはなかなか出来ません。歯周ポケットの中の磨き残した歯垢(プラーク、バイオフィルム)と、血液などの成分が結合するため黒くなります。
下の写真は、重度の歯周病で残念ながら抜歯になってしまった歯です。歯の根の表面から根の先付近まで黒い歯石に覆われていることがわかると思います。歯周ポケットが深い部位には、まずこの黒い歯石がついていると考えていいでしょう。
では、この黒い歯石(歯肉縁下歯石)はどのように取るのでしょうか?いつもの定期的なクリーニングで一緒に取れるのでしょうか?
黒い歯石の除去のタイミングは、患者さん自身のブラッシングが上達し、白い歯石の除去を行った後、ある程度歯肉の炎症が治まってから行います。
深い歯周ポケットが認められる部位には、黒い歯石が付いていることが多いため、レントゲン写真で歯石の有無を確認しながら歯石を除去します(レントゲンで実際の歯石を確認出来る確率は約40%程度で、全ての歯石を確認できる訳ではありません)。痛みがある場合は麻酔を行い、器具は白い歯石を除去するときと同じもの(スケーラーと呼ばれるものです)を用います。一度に全ての黒い歯石を取るということはほとんどなく、4回から6回に分けて行うことが一般的です。歯石の除去と同時に、歯石やプラークなどの沈着で汚染された歯の根の表面をきれいにするのですが、この治療をSRP(スケーリング・ルートプレーニング)と言い、歯周病を治す上で非常に重要で、かつ難易度が高い処置なのです。
歯周ポケットの奥深くに隠れた見えないところに付いている歯石を取る訳ですから、経験と技術にかなり左右される処置です。歯周ポケットが5 mm以上になると9割近くの歯石を取り残すという報告もあります。SRP(スケーリング・ルートプレーニング)をしても歯周ポケットが改善しない場合は、歯石を取り残している可能性があります。そのような時には直接歯石を見ながら除去するために外科処置が必要になるのです。また、歯周病専門医が行うSRP(スケーリング・ルートプレーニング)と、研修医が行なった外科処置の歯石の除去率を比較したところ(歯の根の形態が比較的単純な前歯の場合ですが)、ほぼ同じであったという報告もありますので、歯石取りがいかに専門性が高い処置かわかるのではないでしょうか?
歯石自身は、歯周病の原因ではありません。歯周病の原因はあくまでも歯周病原菌と呼ばれる細菌ですが、歯石はその構造上(軽石のような構造です)、歯周病菌の絶好の住処になります。歯石の中の歯周病菌のみを取り除くのは至難なので、この住処ごと破壊する(歯石の除去)のが、歯周病治療において重要なのです。
定期的に歯石を取っているのに歯肉から出血が続くような場合、歯肉に隠れたところに歯石がついているのかもしれません。心当たりがある方はぜひ当院までお越しください。
バイオフィルム感染症。
歯石には2種類あります。
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