歯周病って治るの? 〜重度慢性歯周炎治療例〜
歯周病は治らないと思われている方が多いのですが、歯周病は治るのでしょうか?
歯周病治療のゴールには、「治癒」と「病状安定」があります。
日本歯周病学会のガイドラインによると、「治癒」とは歯肉の炎症およびプロービング(歯周ポケットを測定すること)時の出血がなく、歯周ポケットは3mm以下、歯の動揺は生理的範囲内を基準とし、「病状安定」とは歯周組織のほとんどの部分は健康を回復したが、一部分に病変が休止しているとみなされる4mm以上の歯周ポケット、根分岐部病変、歯の動揺などが認められる状態を言います。
初期の歯周炎や、歯肉炎程度なら適切なブラッシングやスケーリング(歯石とり)で治癒しますが、中等度以上に進行した歯周炎では多くの場合、病状安定を目指すことになります。
今日は、他院で「歯周病は治らないから、歯ブラシをよく頑張ってください」と言われ、長期間悩まれていた重度慢性歯周炎の方の治療例を紹介します。
初診:2014年8月、61歳の男性
主訴:歯肉から出血する、歯周病は治らないと他院で言われた。
診断名:広範型重度慢性歯周炎
治療経過:①ブラッシング指導 ②スケーリング(歯石とり) ③ルートプレーニング(汚染された歯根の滑沢化)④根管治療、むし歯治療 、予後不良な歯の抜歯⑤歯周外科治療(エムドゲインと骨補填材を用いた再生療法) ⑥補綴治療(セラミッククラウン) ⑦メインテナンス(治療終了後 3ヶ月に一度)
治療期間:約3年
費用:歯周基本治療・根管治療・むし歯治療:保険診療、歯周外科治療(エムドゲインと骨補填材を用いた再生療法):保険外診療(上顎前歯部・上下顎臼歯部、計5回)、補綴治療(ファイバーコアとセラミッククラウン)保険外診療
リスク:歯肉退縮、知覚過敏
副作用:特になし
初診時の写真(左下:上)をみると、全体的に歯肉の腫れと出血が認められます。患者さんは、歯磨きをすると歯肉からの出血と痛みがあり、ほとんど歯ブラシを当てられない状況でした。
治療に先立ち、歯周病の検査(歯周ポケットの測定、レントゲン写真の撮影、口腔内写真の撮影など)を実施します。検査結果に基づき、まずは歯科衛生士による歯ブラシの指導(柔らかめの歯ブラシを使用し、歯肉をマッサージする)の後、患者さん自身によるプラークコントロールが確立したところで、衛生士によるスケーリング(歯石とり)とルートプレーニング(汚染された歯根の滑沢化)を実施します。
歯肉の炎症が軽減した後、むし歯治療、根管治療、不適合な被せ物の除去、仮歯の装着、予後不良な歯の抜歯などを行います(以上の治療を歯周基本治療といいます)。約半年にわたる、主に歯科衛生士による徹底的な歯周基本治療と患者さん自身によるプラークコントロールの結果、初診時に比べると著しい歯肉の回復を認めました(写真右下)。
歯周基本治療でも治らなかった、深い歯周ポケットが残存した部位には、エムドゲインと骨補填材を用いた再生療法(歯周外科治療)を行います。全体的な歯周組織の回復を確認し、最後に補綴治療(被せ物)を行い、病状安定と判断、治療が終了しました。
その後は、3ヶ月に一度のメインテナンス(サポーティブペリオドンタルセラピー)を続けます。治療終了後2年経過時のメインテナンス時の口腔内写真(左下:下)を見ると、健全な歯周組織が維持されていることがわかります。
残念ながら、抜歯になってしまった歯もありましたが、患者さんも初診時に比べると、歯肉からの出血はほとんどなくなり、食事もよくできるようになったと非常に満足されています。
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